リタイアおじさんの介護とシニアライフ

名古屋市在住の70歳。要介護4(身障手帳1級)の妻を在宅介護しつつ、シニアライフをそれなりに楽しんでいます。

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GDPはわかりづらい

GDPの記事を読んでも

私は昔、日本経済研究センターに1年出向しており、経済予測に携わっていました。

銀行に戻ると調査部という部署に配属され、そこで3年弱の間、調査月報に景気動向を執筆していました。

40年くらい前の話ではありますが、景気やGDPについては相応の知識があるつもりです。

このブログを読んでいただいている方にはあまり興味のない分野かもしれませんが、多少なりともお付き合いいただければ幸いです。

今週、2021年4~6月期のGDP速報が公表されました。

www.nikkei.com

www3.nhk.or.jp

GDPは景気の基礎資料で。最も重要な経済データです。

ただ、GDP速報を伝える記事を見て、しっくりきましたでしょうか⁈

四半期毎の成長率を見てもよく分からないというのが実感だと思います。

ずっとプラス成長ならよいですが、最近はプラスとマイナスが入り混じっているから、より分かりづらくなっています。

分かりづらい理由の第一は金額が出てこないことにあるとみています。

上記の日経新聞NHKのWeb記事、伸び率ばかりで金額がでてきません。

上場企業も四半期毎に決算速報を公表しますが、まず売上高と利益の実績金額を示し、それが経営計画や前年同期と比べていくら違っているのか、その理由は何なのかを報告しています。

GDPの記事には金額が出てこないから、具体性を欠き分かりづらいのです。

そもそも記事のベースとなっている内閣府の公表資料が下記ですが、

2021年4-6月期四半期別GDP速報(1次速報値)資料1 (cao.go.jp)

伸び率ばかりで金額がでてきません。

マスコミはこれをベースに伝えますから、こういう記事になるのはやむをえない面があるのです。

GDPのデータは複雑に加工されている

内閣府は金額を公表していない訳ではありません。

このサイトの四半期名目原系列を開けば、数字が記載されています。

www.esri.cao.go.jp

 ただ、四半期タームの景気動向資料として使われるのはその下の方にある実質季節調整系列というデータです。

こちらの方が四半期毎の動向を把握するのに便利なのです。

問題はこの数字が加工された数字であることです。

〇年率で表示されている。4で割ればほぼ四半期の数字となりますが、厳密には違ってきます。

〇季節調整されている。原数値では日数も異なるうえ季節要因もあるので比較が困難です。このため、原数値から季節要因を除去した季節調整値を算出し、比較できるようにしています。

データは異なりますが、こちらが参考になります。(同じく内閣府の資料です)

point04.pdf (stat.go.jp)

〇ある年からの物価の上昇・下落分を取り除いた実質値に修正されている。原数値では物価変動の影響を受けるため、経済成長率を見るときは、これらの要因を取り除いた実質値を使っています。

実質季節調整値は複雑な加工を施されたバーチャルなデータであり、数字を表に出すと、事情を知らない人には誤解されたり、一人歩きするおそれがあります。

企業の売上高はデータとしては一つですが、経済データは一つの事象に対し幾つかの異なる数字を持っているのです。

ちなみに最近の実質GDPを金額ベースでグラフで示すと、こんな感じです。

f:id:koichi68:20210819134543p:plain

2018~2020は年度(4~3月)原数値。それ以降は四半期毎の季節調整値の年率。実質値。単位:兆円

これを見ると、ここ3期はコロナ感染直後の最悪期は脱したものの、一進一退というところで、まだコロナ以前には戻っていません。家計調査をみると、旅行と外食の支出が減っていますので、コロナ対策による影響がでているようです。

GDPは国内の生産データである

GDPのデータは通常支出別の内訳が記載されています。(民間消費、民間設備、政府消費等)

ただ、GDPとはgross domestic product(国内総生産)の略であり、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額を示しています。

日本国内の生産(サービスも含む)の総計であり、支出の合計ではありません。

ここも誤解を招きやすいところです。

表で説明すると、

f:id:koichi68:20210819134540p:plain

年度は原数値。四半期は季節調整値で年率値を便宜的に4で除した。政府支出には投資を含む。在庫は公的在庫を含む。実質。単位:兆円

 GDPは上表の民間消費支出から輸出迄を足して、輸入を差し引きます。

輸入分を控除するのは国内で生産したものがGDPであって、海外生産分は関係ないからです。

民間消費支出や政府支出等の数字には輸入分が含まれており、差し引かねばなりません。

輸入品除きの民間消費支出などが計算できればよいのですが、簡単ではないのです。

先ほどの日経新聞の記事に「ワクチンの購入費用などが膨らんだ」とありますが、

当然ながらワクチンの輸入(貿易統計からみると2021年4~6月期は1~3月より2,500億円ほど輸入額が増加)はGDPとは関係ありません。文脈からそうは書いてないのですが、誤解しやすいところです。

2021年4~6月期の政府支出の中にワクチン分が2,500億円ほど含まれており、同額を輸入として控除していると思われます。

もう一つ注意しておかねばならないのは、消費ではなく生産データということ。売れなくとも在庫を積み上げておけばGDPは増加します。

このための項目が在庫変動です。在庫変動の額はごく小さいのですが、振れ幅が大きく、実績値がマイナス(在庫ストックが減少)になることもしばしばです。

GDPの増減要因を解明しようとすると結構在庫増減が影響を与えるので面倒です。

2021年4~6月期の実質GDPは44百億円程度減少していますが、在庫変動の減少が25百億円もあり影響は無視できません。

在庫水準自体は前期比増加しているのですが、増加額の水準が前期より減少したため、GDPにはマイナス影響となるのです。

これを無理に説明しようとしてもなかなか理解されないので、触れないでおくのが無難なところかもしれません。

まだ書きたいことはあるのですが、長くなりましたので今日はここまでとします。