マクロ経済スライドとは?
昨日の新聞に下記の記事が掲載されました。
これも少々分かりづらい記事です。
年金の積立不足の問題とマクロ経済スライドの話がごっちゃになっていて、ただでさえわかりずらい話が一層わかりにくくなっている気がします。
そもそも年金のマクロ経済スライドとはなんでしょうか?
厚生労働省の説明は下記の通りです。
こちらの方が分かりやすいでしょうか。
2021年4月から変わる 年金額の改定ルール見直しのポイント | ソニー生命保険株式会社 (sonylife.co.jp)
年金は固定額ではなく、インフレ等で価値が目減りしないよう調整が行われています。
新規裁定者(新たに年金をもらい始める人)は賃金スライド、既裁定者(既に年金をもらっている人)は物価スライドによる調整が行われます。
一方で、年金財政の悪化を受け、現役世代が負担できる範囲内で年金給付を調整するための仕組みも取り入れられています。
これがマクロ経済スライドと呼ばれるものです。
例えば物価や賃金が2%上昇してもマクロ経済スライドによる調整が1%と計算されれば、年金の上昇率は1%程度となります。実質的な年金受取額は目減りしますが、その分将来的な年金財源が安定化するという訳です。
ただし、物価や賃金の上昇が小幅でマクロ経済スライドによる調整をすると年金が減少する場合は年金は据え置き、物価・賃金が下落した場合はこの分だけ年金が減少しマクロ経済調整は実施されません。
この制度はインフレを前提として年金額を調整していこうとしていますが、現実には物価・賃金は上がらず効果を発揮しているとは言い難い状況です。
上記サイトによれば「直近10年間の年金額の推移をみると少子高齢化やデフレの継続により、9年前の2012年度の年金額を超えた年は一度もありません。」と記されています。
基礎年金の方が財政基盤が脆い
日本の年金制度は少子高齢化が進んでも制度が維持できるような仕組みが導入されています。
こうした中で、厚生労働省が公開している資料に年金積立度合の見通しがあります。
上記サイトによれば、積立度合とは各公的年金制度において、前年度末の積立金が、当年度の基礎年金拠出金や給付費等の支出の何年分に相当するかを示しているものであり、マクロ経済スライドによる給付水準の調整は、おおむね100年後の積立度合が1となるように行われますとあります、
このサイトに厚生年金と基礎年金(国民年金)の積立度合の見通しについてのシミュレーショングラフがありますが、厚生年金が経済が成長しないケースでも100年後も1を維持できるのに対し、基礎年金は経済が成長しないケースでは積立金が無くなってしまいます。
その後のページでは「経済が比較的成長するケースにおいても、基礎年金のマクロスライド調整には30年近くを要するため、基礎年金の水準が相対的に大きな低下となる」と書かれています。
年金制度のさらなる安定のために~オプション試算ってなに? | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)
マクロ経済スライドが続くことで物価や賃金の上昇に見合わない給付額になることが懸念されているのです。
新聞記事では厚生年金保険料の一部を回す案のことが書いてありどきっとしますが、案の一つと考えておけばよさそうです。
年金の財源に不安はあるが・・・
少子高齢化に伴い年金制度を維持していくことが困難になることは私が20代の頃から問題となっていました。
当時はインフレにより解決されるという楽観的な考え方が支配的だったような気がしますが、物価は上がらず、低成長が続いて、事態は当時考えられていたよりも悪くなっているように思います。
今や世代を問わず将来の年金支給について不安を抱いている方が多いと思います。
上記サイトでも、シミュレーションとして①マクロ経済スライドの仕組みの見直し ②被用者保険の更なる適用拡大 ③保険料拠出期間の延長と受給開始年齢の選択制の試算が行われ、更に④退職年齢と受給開始年齢を65歳以降とした場合の試算も行われています。
ただ、どれも抜本的な解決策にはなりそうもありません。
実質的な目減りは覚悟しておいた方がよさそうです。
とはいっても年金制度自体がなくなることは考えられず、シニア世代では年金を頼りに生活設計を立てていくしかありません。
制度自体が変わっていくことは間違いないので、情報を集め、内容を理解したうえで都度対策を考えていかざるをえません。