リタイアしても税金や社会保険料の負担が重い
リタイアすると収入は公的年金に頼ることになります。
現役時代に比べると収入は大幅に減少します。
かといって税金や社会保険料がかからないかというと、そういう訳ではありません。
むしろ結構負担が重いのです。
総務省が公表している家計調査年報2020年から調べてみました。
ここから、65歳以上の無職の夫婦1組のみの世帯(高齢者世帯)と勤労者世帯全体の経常収入と非消費支出(税金や社会保険料)を抜き出したのが下の表です。
リタイアしていますので、高齢者世帯の収入は現役世代の半分以下です。
ところが、高齢者世帯の非消費支出の割合は13.1%もあります。
勤労者世帯の非消費支出の割合は19.3%と高齢化世帯より高いのですが、高齢者世帯が払っていない年金保険料(貰う方ですから当然です)を除くと12.5%となり、高齢者世帯より低くなります。
高齢者世帯にとっては、収入が286万円に減ったのに、非消費支出が37万円もあるのは痛いところです。
同じ家計調査からみると、高齢者世帯の年間赤字額(経常収入-経常支出)は21万円の赤字となっているので、税金や社会保険料さえなければ黒字なのにという思いがでてきます。
リタイア世代には地方税と健康保険料の負担が大きい
リタイアしても税金や社会保険料の負担が大きいのはどこに原因があるのでしょうか?
これをみるため、年金受取額に対して、税金や社会保険料がどれだけかかるかを計算したのが次の表です。
単純化するため、単身世帯をモデルとしています。上述の家計調査は世帯の数字ですので違いがでるのはご容赦ください。健康保険料は後期高齢者制度で計算しています。(国民健康保険でも大きな違いはでません)
これを見ると、地方税、健康保険料、介護保険料の負担が大きいことが分かります。
所得税の税率は累進課税なので、所得が少ないと納める税金も少なくてすみますが、地方税は所得割が定率なので低所得でも結構な税金がかかります。
そして健康保険料(介護保険料を含む)はサラリーマンについては会社が半分負担してくれるのに対し、リタイアしたら全て自己負担です。しかもサラリーマンの被扶養者は保険料負担がありません。これに対し後期高齢者保険料や介護保険料は一人づつ保険料がかかります。
こうしたことが、リタイア世代の税金や社会保険料負担が重い要因になっているようです。
年金繰り下げも可処分所得を考慮に入れて対応
最初に触れた家計調査によると、高齢夫婦の年間支出額(税金・社会保険料)は307万円(月25万円)です。
更に私のように妻が要介護状態になると、介護保険を使って在宅介護をしても年間50万円くらいかかります。施設入所となれば年間300万円くらいは覚悟しておかなければなりません。
このため年金の繰り下げ受給で年金額を増やすのは、老後の生活の安定にとって有効な方法と思います。(ただし、年金を貰うまで働くか貯蓄を取り崩すことが必要ですが)
年金の繰り下げ受給は来年以降は75歳迄可能になります。(ただし、2022年4月1日以降に70歳に到達する人が対象)
ここで注意しておきたいのが、年金や社会保険料の負担です。年金を増やしても手取り(可処分所得)はそれに比例して増えません。
上記の表からみると、受取額150万円以下であれば、税・保険料の負担はほとんどありませんが、これを超えると税・保険料の負担が急に大きくなり、可処分所得の比率が減っていきます。
年金受給をどこまで繰り下げるかは、受給額の増え方だけでなく、可処分所得の増え方を考慮することが大事になってきます。
なお、受取額240万円迄は可処分所得の比率が減り続けますが、これを超えると減り方も小さくなります。ここまでくると、可処分所得の比率はあまり変わりませんから年金を増やしていってもあまり問題は無いように思えますが、一点注意が必要です。
国民健康保険では70歳以降の自己負担は2割、後期高齢者医療制度(75歳以降)では1割となりますが、年収が一定額以上になると自己負担の割合が増えます。
それが下の表です。
年金収入が255万円(所得145万円)以上になると、70歳以降は3割、後期高齢者医療制度では2割の自己負担が求められます。
ただし、年金収入383万円(所得273万円)未満であれば、申請すればそれぞれ2割、1割に減額されます。
年金収入が383万円以上になると、70歳以上は引き続き3割、75歳以上は2割の自己負担となります。(単身世帯の場合)
公的医療保険制度を知ろう!医療費の自己負担割合はどれくらい? (taiyo-seimei.co.jp)
ご注意ください。