住宅ローンは団信つきであることを知らずに・・・
今から35年くらい前、都内の支店で融資の課長をしている時のことです。
住宅ローンを借りている方が亡くなっていることが分かりました。
早速、奥様に連絡、来店をお願いしました。
私「ご主人はいつ亡くなられたのですか?」
奥さん「1年くらい前です」
私「何で今まで連絡していただけなかったのですか?」
奥さん「主人が亡くなったことが分かるとローンを全額返さなくてはいけないでしょう。家を売りたくないから、私が頑張って返済していました。」
私「住宅ローンには生命保険がついていることをご存じなかったのですか?」
奥さん「知りません。」
住宅ローンを借りると、今も昔も団体信用生命保険(団信)がついています。(今はフラット35など一部例外がありますが)
債務者が亡くなると、銀行は団信から残債を回収することになります。
この奥さんの場合も、亡くなってすぐ連絡があれば、返済はストップし、団信により借入残額を全額返済することができました。
亡くなってから1年もたっていて、時効にならないか心配です。
取り急ぎ、団信を取り扱っている保険会社に連絡をすると、何で1年も経ってから請求するんだというお叱りはありましたが、経緯を話してお願いすると至急請求手続きをしてくれという返事でした。
書類を整えて申請すると、無事保険金が支払われ、ローンの残債を返済することができました。
奥さんもこれから返済を心配することなく、自宅に住めます。
払われる保険金は本来は死亡時点の金額ですが、1年間返済していたため、この分は対象になりません。
直ぐに銀行に申し出ていれば、余計な支払をせずに済んだのですが、団信のことを知らなければやむをえません。でも、無事団信が支払われてホットしました。
なお、保険金の請求時効は平成22年4月1日施行の改正保険法95条(消滅時効)により
「保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、3年間行わないときは、時効によって消滅する。」と定められていて、債務者の死亡から3年以内に保険金を請求しないと、保険金が下りない可能性があります。
ローンの相続に注意
相続が発生した時、相続財産は資産だけとは限らず、借金が残っていることがあります。
もし資産より借金の方が多ければ、相続放棄することができますが相続が開始されてから3か月以内に家庭裁判所に手続きする必要があります。
銀行からの借入(ローン)が判明したら、取り急ぎ銀行に相談が必要です。先に銀行預金が凍結されるのが普通ですから、ローンがあればまず銀行の方から連絡があると思います。
住宅ローンであれば先ほどの話のように団信に加入しているのが普通ですから、銀行で手続きを進めてくれます。
ただし、団信がついているだけでは安心できません。もしローンの返済が遅延していたなら、団信が下りない可能性があるのです。
住宅ローンを延滞したら、団体信用生命保険(団信)の保障がなくなります。 - 愛実司法書士事務所 (megumi-office.com)
住宅ローンの返済遅延が続くと銀行は保証会社の代位弁済を請求したり競売手続きにはいりますが、その時点で団信の保障が無くなるのが普通です。
そもそも団信の保険料はローンの利息に含まれているのが普通ですので、返済を遅延するということは保険料を払っていないことになります。
先ほどの話では奥さんが返済を続けていたことが結果的によかったことになります。(もちろんすぐ連絡をくれればもっとよかったのですが。)
あと、アパートローンは昔は団信なしが普通でした。債務者が亡くなっても家賃収入により返済が可能と考えられたからです。相続対策としてアパートを建てることも多く、この場合は借金を残すことにメリットがあり、団信で返済する必要がないからです。
今では、アパートローンにも団信をつけることができるようになりました。
アパートローンを利用するなら覚えておきたい!団体信用生命保険の加入条件と加入方法【スマイティ 賃貸経営】 (sumaity.com)
こちらも相続の際には団信の有無を確認することが必要です。当然ながら返済遅延の有無も確認も忘れずに。
団信がなければ、直近の家賃収入と返済額を比較し、家賃による返済が困難であるなら、相続放棄が視野に入ることがあります。