収入、所得、課税所得の違いは?
リタイアして年金収入だけで暮らすようになっても、税金(所得税、住民税)や社会保険料(健康保険、介護保険)は払わなければなりません。
年金で生活する世帯を対象に税金や社会保険料がどうのように賦課されるのか調べてみました。
通常、税金や社会保険料算出のベースとなるのは所得です。
所得は収入をもとに計算されます。
年金生活者であれば、源泉徴収税額や特別徴収税額や社会保険料などが天引きされる前の年金の額が年金収入となります。(年金振込通知の年金支払額が年金収入です。)
収入からそれを得るためににかかった費用を控除したものが所得です
給与や年金はかかった費用が厳格に計算できないので、それぞれ給与所得控除額、公的年金等控除額が税法で定められています。
年金収入から公的年金等控除額を引いたものが年金所得となります。
公的年金等控除額の算出方法は下記に示されています。年金収入が330万円未満の人は110万円が公的年金等控除額です。
なお、税法上は10種類の所得がありますが、それぞれの所得について、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。
No.1300 所得の区分のあらまし|国税庁 (nta.go.jp)
なお、事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額に総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1を加え、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額を合計所得といいます。
1か年間の全ての所得から所得控除を差し引いて算出されたものが課税所得です。
所得控除には下記のものがあります。
所得金額から差し引かれる金額(所得控除)|国税庁 (nta.go.jp)
税金計算では課税所得が使われる
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁 (nta.go.jp)
地方税(住民税)は均等割と所得割で構成されており、所得割については課税所得に税率を掛けて計算します。
名古屋市:税額の計算方法(暮らしの情報) (city.nagoya.jp)
また地方税は前年の所得を対象とします。(所得税は当年を対象)
住んでいる市町村によって、税額の計算方法には違いがありますので、注意が必要です。
なお、均等割も所得割も課税されない(住民税非課税)基準は下記の通りです。
名古屋市:市民税・県民税が課税されない方(非課税)(暮らしの情報) (city.nagoya.jp)
ここでは所得の基準に課税所得ではなく、合計所得が採用されています。(課税所得ではありません)
単身世帯では年金収入155万円、夫婦二人世帯では年金収入211万円がボーダーラインです。住民税非課税世帯になると、介護保険等で優遇されます。
社会保険料では所得金額がベース
国民健康保険料も均等割と所得割があります。
名古屋市:令和3年度分の国民健康保険料(暮らしの情報) (city.nagoya.jp)
所得割の計算には総所得(合計所得から退職所得を控除)が使われます。ここから地方税の基礎控除額(年収2400万円以下であれば43万円)を引いたものがベースとなっています。計算の仕方は市町村によって異なります。
後期高齢者医療制度(原則75歳から加入)における保険料も、算定方法は国民健康保険料と同様です。
名古屋市:保険料の算定方法(暮らしの情報) (city.nagoya.jp)
ただし、国民健康保険料は世帯単位で加入者の所得を合算するのに対し、後期高齢者制度では被保険者一人毎に計算され、一人ひとりに賦課されます。
介護保険料は所得に応じて15段階に分かれています。所得は合計所得(課税所得ではない)が基準となります。
第1号被保険者の保険料 | 介護・障害情報提供システム (city.nagoya.jp)
住民税非課税世帯は保険料では優遇されています。
実際に税金や社会保険料を計算してみると
実際に計算してみると、概略下記のようになります。
夫婦二人の世帯を対象とし、夫の年金収入は年240万円(月20万円)、妻の年金収入は80万円としています。健康保険料は後期高齢者制度で計算しました。個別にかかる妻の健康保険料及び介護保険料は計算していません。
所得税や住民税は所得控除があることから税額はそれほど大きくありません。
これに対し健康保険料や介護保険料は控除額がほとんどなく、保険料負担が大きくなっています。
年金生活者にとっては、社会保険料が厳しいことが理解できると思います。