農地は簡単に処分できない
私は父の死去に伴い農地を相続することになりましたが、できることなら相続したくはありませんでした。
長男として母から依頼されてやむなく相続したというのが実情です。
いったん母に相続してもらい、母が亡くなった後に相続放棄するという考えも頭をよぎったのも事実です。
農地には制約が多すぎます。農地法に縛られています。
農地は売買(3条)、農地以外への転用(4条)、転用を前提とした売買(5条)が制限されています。
農地の売却は農地のままであればハードルは低くなります。それでも事前に農業委員会の許可が必要ですし(第3条)、買主側の農業知識や技術の有無も問われますので、買主を見つけるのは容易ではありません。そもそも農業人口は減り続けています。
転用を前提とした場合は買い手は見つかりやすいかもしれませんが、都道府県知事の許可を受けなければなりません(第5条)。この場合も買い手側には具体的な使途等を説明することが必要で、審査のハードルは高いようです。
そもそも農地自体が生活するのは不便な場所にあり、転用してもそう簡単には買い手がつきそうにありません。
土地改良区内にあるともっと大変
農地法の問題は私も承知していたので覚悟はしていたのですが、それ以外にも問題がでてきました。
私が相続した農地の一部が土地改良区に含まれているから、利用料を払えというのです。
土地改良区とは、土地改良法により成立を認められている公法人で、かんがい排水事業(用水路・排水路整備)、圃場整備事業(農地を整備し田畑に水を引く)等の土地改良事業、用排水路等の維持管理などを行っています。
その地区内にある土地について、土地改良法第3条の資格を有するものは、設立の同意、不同意に関係なく、すべてその土地改良区の組合員になります。
相続した場合も組合員になります。脱退は認められません。
土地改良区の組合員には、事業を維持するために賦課金が課せられます。
農家に生まれた者は代々農地を相続して農業を続け、農業用水等の費用も永遠に支払い続けるということになります。
土地改良区内の農地を相続すると、固定資産税ばかりか賦課金迄払い続けなければなりません。農業をする人であればよいのですが、農業をしない人にとっては負担だけがかかります。
そんな土地ならさっさと手放したいところですが、簡単なことではありません。
改良区外の農地すら売却は難しいのに、土地改良区内となれば農業委員会の審査が厳しく、手続きも面倒なようです。
私の場合は、一つは該当する農地が自分の所有物ではないこと、もう一つの土地は土地改良区ではなく水利組合(加入に法的拘束力がない)であることから、結局賦課金は払わないことで決着しました。
農地を相続する際にその土地が改良区に属するかどうか調べようがありません。相続したら突然賦課金が発生しますので注意が必要です。
農地の貸し出し
私が相続した田は貸し出されていました。
父が高齢で体がきつくなり米作りを止めた時点でその話は聞いていました。
ただ、どういう条件で誰に貸し出しているかが相続時点でもわかりませんでした。
その後、名義変更の書類が届き、農地中間管理機構(通称農地バンク)を利用していたことが判明しました。
相続地のある静岡県農業振興公社(静岡県農地バンク)が間に入り、農地を貸し出したい人が借りたい人に貸し付ける制度です。間に公共的な公社が入ることにより貸し手、借り手とも安心して農地の貸借ができます。
契約書が手元に無かったので、浜松市役所に連絡しコピーを送ってもらい、契約内容が把握できました。
契約内容は契約期間10年、賃貸料は10a(1,000㎡、約1反)当たり6,000円というものです。賃貸している農地の広さは2,051㎡ですから、年間賃貸料は12,306円になります。固定資産税が3,143円課税されていますから、ネット収入は9,163円となります。
たいした収入にはなりませんが、農地の有効活用と食糧の自給に貢献しているということで、これはこれで納得しています。
問題はそれ以外の畑やみかん園。これらはずっと放置はできません。かといって自分で農地として活用することもできません。
頭の痛い問題です。