遺言書をどう作る
妹夫婦には子供がいません。
子供のいない夫婦のうち夫(妻)が死亡した場合、その両親が既に亡くなっているときは、法定相続となると、夫(妻)の財産は、妻(夫)が4分の3、夫(妻)の兄弟が4分の1の各割合で分けることになります。
しかし、子供がいないなら長年連れ添った妻(夫)に全財産を相続させて、残った妻(夫)の老後資金としたいと思うのが普通です。そのためには、遺言をしておくことが必要です。兄弟には、遺留分がないので、遺言さえしておけば、全財産を妻(夫)に残すことができます。特に兄弟が死亡していると代襲相続が発生し、トラブルになりかねません。
正月に実家に帰省した際、この話を妹にしてみました。
妹も相続のことは気にしていたようで、この話は了解しましたが、一言問われました。
「遺言書はどう作ったらいいの?」
そういえば、そこまでは考えていませんでした。
ということで、遺言書の作り方を調べてみました。
秘密証書遺言は利用者が少ない
遺言書には公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
このうち、秘密証書遺言は他の二つに比べ利用件数が格段に少ないようです。
秘密証書遺言の作成方法・流れ・要件 (souzoku-mado.jp)
秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも公開せずに秘密にしたまま公証人に遺言の存在のみを証明してもらう遺言のことです。
最大のデメリットは、遺言の内容までは公証人がチェックしないため、記載した遺言内容が無効になってしまう恐れがあります。
また秘密証書遺言は公証役場で公証人に証明してもらいますが、遺言自体は公証人は保管しませんので、作成した遺言が発見されない危険性もあります。
公正証書なら間違いないが・・・
公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します。
公正証書遺言は公証役場で公証人によって作成されるため要件不備で遺言自体が無効になることは通常考えられません。
また、公正証書遺言は遺言作成者の死後、家庭裁判所による遺言の検認作業が省略されます。公証役場で管理されますので遺失や破棄、発見されないというような心配もありません。
ただし、公証人、証人に手数料、報酬を払う必要があります。上記サイトでは3~8万円が相場と書かれています。
妹夫婦が利用しようとすると、夫婦それぞれが遺言書を作らねばなりませんから結構な負担になります。
財産内容の調査、書類収集等でも自筆証書遺言より作成に手間と時間が格段にかかるようです。
多くの相続財産がある方は公正証書で万全を期した方がといと思いますが、そうでなければ手軽な自筆証書の方がといような気がします。
自筆証書の方が気軽に利用できそう
自筆証書遺言とは、全文(財産目録を除く)を自筆で書き上げる遺言書のことです。
ただし、民法の要件を満たしていない遺言を書いてしまい遺言が無効になってしまう恐れがありますので注意が必要です。
費用がかからず手軽に作成できるのがメリットです。
一昨年自筆証書遺言保管制度ができ、使いやすくなりました。
自筆証書遺言は、自宅で保管していた場合には、これを紛失したり、発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどに、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険性がありました。また、その遺言書を発見した者が、必ず家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続を経なければなりません。
自筆証書遺言保管制度を利用すればこうした問題点が解決されます。
手続きは、まず自分自身で自筆証書遺言を作成し、事前予約をしたうえで法務局へ出向き保管申請を行います。受付が完了したら遺言書保管事実証明書が交付されます。
注意すべきは財産目録以外は本人の自筆が必要なこと、及び民法の要件を満たしたものでなければならないことです。
書式等は下記に掲載されています。
03 遺言書の様式等についての注意事項 | 自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)
保管申請手数料は1件3,900円と公正証書に比べれば格段に割安です。
冒頭の妹夫婦の場合は、この制度を利用するのが手間もかからず、費用も割安でよいと思います。相続相手も配偶者だけで、全財産を遺贈するのですから遺言書の内容も簡潔でよさそうです。
貸金庫の中に自筆証書遺言を入れておくという方法も
私は自分が勤めていた銀行の貸金庫を利用しており、通帳や権利書はこの中に入れています。相続人(妻子)にはこのことは伝えています。
貸金庫の中に遺言書を入れておく人も結構いるようです。紛失の心配はありませんし、相続の際、貸金庫を開けますから遺言書が発見される可能性も極めて高いと思われます。
問題は貸金庫の相続手続きに手間がかり、すぐには開けられないことです。
私としてはとりあえず万一に備えて自筆の遺言書を作成して貸金庫の入れておき、しかるべき年齢になったら自筆証書遺言保管制度を利用するという方法を考えています。
遺言書の内容は時とともに変えたいと思うことも多いでしょうから、当座は貸金庫に入れておいた方がコストはかからず、変更も簡単です。