相続財産は放棄できる
被相続人(亡くなった人)に借金等があり、相続したくない場合は相続放棄という手段があります。
私も父が死去した時、相続放棄を考えたことがあります。
相続放棄が考えられるケースは
〇多額の負債があり、資産を処分しても負債を返済できない場合~この場合の負債とは借金だけでなく、未納の税金、家賃や入院費・公共料金等の未払い分、株式の信用取引をしていた場合の追加保証金、連帯保証債務(被相続人が会社を経営していたり、個人事業をしていた場合等)などが含まれます。
〇相続財産が不動産のみで、資産価値が乏しく管理に費用がかかる場合~私が父から相続した不動産も辺鄙な場所にある田畑が大半で、簡単に処分できません。一旦母に不動産を相続してもらって、母が亡くなった時点で相続放棄することも考えていました。(結局は全ての不動産を私が相続しました)
が考えられます。
相続放棄の手順
相続放棄と相続分の放棄は異なります。
相続分の放棄とは他の相続人に対し「私は相続しません」と意思表示することです。
ただしこの場合は被相続人の債権者に対してはは相続分の放棄は通用せず、借金などの負債を免れることはできません。
相続が開始した場合,相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
①相続人が被相続人の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認
②相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄
③被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認
②の相続放棄や③の限定承認は、家庭裁判所を通して手続きをする必要があります。これにより借金などの負債から免れることができます。
相続放棄の手続きは上記裁判所のサイトに出ています。
相続放棄は、基本的に相続開始を知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申述をしなければなりません。ただ相続放棄を知った日を証明するのは難しいので、被相続人が死去した時から3か月以内に申述するのが無難なようです。結構時間がありません。
法定単純承認に注意
相続財産に手をつけてしまっていると、相続した事を承認(単純承認)したとみなされて相続放棄ができません。
上記サイトでは単純承認にあたる例として
・故人の預貯金を勝手に下ろし、生活費に使用した
・財産を故意に損壊、もしくは破棄した
・悪意をもって相続財産を隠匿した
が、あげられています。また下記の費用を払っても単純承認とみなされます。
・墓地や墓石の購入にかかる費用
・仏壇や仏具にかかる費用
・本位牌の作成費用
・死体の解剖にかかる費用
ただし、葬儀費用に使用する場合は相続財産の処分に該当せず、相続放棄が認められます。(身分不相応で華美な葬儀を行った場合は認められませんので注意)
相続放棄しても管理義務が残ることに注意
相続放棄しても不動産等の管理義務が残ってしまうケースがあります。
上記サイトにあるように、
民法940条では、相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
と、されています。
相続人が1人で後順位の相続人がいない場合はその相続人が
複数の相続人が全員相続放棄した場合は、最後の放棄した相続人が
遺産を管理しなければなりません。
適切に管理しなかった場合は
・損害賠償を請求される
・事件に巻き込まれる
・相続放棄の効果がなくなる
といったリスクが生じるおそれがあります。
管理責任を逃れるためには、家庭裁判所で相続財産管理人を選任するという方法があります。
ただし、費用が100万円近くかかる可能性があります。
単に不動産の管理を避けるために相続放棄を選択しても、リスクは残りかえって費用がかかる場合があります。
相続放棄する場合は、慎重な対応が必要です。といって猶予期間は3か月しかなく、判断する時間的余裕はあまりありません。頭の痛い問題です。