月13万円で生活できる?
先般見かけた森永卓郎氏の記事
厚生労働省の「財政検証」で、最も厳しい想定を置いた時の推計結果からすると30年後の厚生年金は夫婦合わせて13万円になる恐れがあるとのこと。
これに対応するために、資産運用で貯蓄を増やす、働き続ける、田舎暮らしをする、といったことが考えるがどれもうまくいくとは思えない。
(ここまでは私もあまり異論はありません)
これに対応するため、森永氏自ら都会から少し離れたところに住み、農地を借りて野菜等をつくって食費を減らしたりしたところ13万円で家計がまわったということを書いています。
ここのところは少々疑問を感じます。
森永先生は計量経済学がご専門とのことですが、数字が具体的に出てきません。
税金や社会保険料は入っているのでしょうか。年収13万円だと所得税、住民税は非課税ですが固定資産税はかかります。社会保険料も必ず賦課されます。
野菜を育てるには肥料等コストがかかります。まとめて育つため毎日同じものを食べ続けることになります。(私の子供時代の体験です。)
せっかく育てたのにスーパーで買った方が安いと農業歴70年の母がいつもぼやいていました。
メインの肉や魚は買うしかありません。(たぶんお米や調味料等も)
都心から離れるとマイカーも必須で、維持費等バカになりません。
生活費の内訳を公開していただけると検証できるのですが・・・
最低月生活費22万円?
一方、こんな記事もあります。
こちらは収入が月25万円(家計調査)に対し、最低日常生活費22万円、ゆとりある生活費は36万円(生命保険文化センター)が必要として貯蓄を勧めています。
これも雑駁な記事で、輸入と支出を別な出典からもってきており整合性がありません。
特にゆとりある生活費36万円は単なる理想と思われ、こんなに必要とは思われません。
家計調査によれば世帯主が40~50歳代の家庭の消費支出(税金等の非消費支出は除く)は28万円であり、子育てが終わり体力も衰えてくる高齢者世帯で36万円も必要になるとは思えません。
心配をあおるだけの記事もいかがなものかと思います。
現実の生活費は?
2021年の家計調査速報により、65歳以上の無職夫婦二人世帯の収支をみると
実収入が256,660円
経常収入が238,371円
実支出が255,549円
消費支出が224,390円
非消費支出(税金・社会保険料)が31,160円
となっています。
これは25万円くらいの収入がないと生活が厳しいという意味ではなく、あくまでも平均の支出が25万円と考えるべきです。
そして収入と支出がほぼ合っているということは、多くの高齢者世帯が収入に見合った生活をしていると考えた方がよさそうです。
そこで家計調査による高齢者世帯の1か月の実支出255,549円の内訳をみると、こんな具合です。
このうち、教養娯楽費19,662円やその他消費支出(主は交際費)46,753円は生活していくうえで絶対必要なものではく、ある程度自由に使えるお金です。
実支出255,549円(消費支出224,390円)もあれば、それなりにゆとりある生活という感じがします。最低日常生活費というレベルではありません。
教養娯楽費やその他消費支出の他、食費中の外食費等その気になれば減らせる支出は結構あります。
収入が少なければ少ないなりに暮らしていけそうです。
とはいえ森永氏の言う月15万円の実支出(消費支出は13万円程度)で暮らしていけるかというと、これはなかなか厳しいハードルと思います。
ちなみに我が家の実支出は226,400円くらいで内訳は下記グラフの通りです。
我が家の場合は妻の介護費用(35,000円)と実家の維持費用(固定資産税を合わせ17,700円)が負担になっており、これを除くと173,700円となります。
更に我が家の場合は4人家族で食費や水道光熱費は二人世帯より割高になっています。
こうした特殊要因を除けばかなり15万円に近付くことになります。
妻の介護が中心の生活で教養娯楽費やその他消費にお金を掛けていないことで結果的に節約ができています。
ただ、お金を掛けなくとも自分なりに工夫して生活をエンジョイしているので、それなりに充実した毎日を送っています。