高齢者の地方移住
高齢者の移住が、都市部の高齢化対策のひとつとして近年注目を集めています。
田舎暮らしを満喫し、畑で野菜を育てながら、のんびりと暮らしたいというあこがれをお持ちの方もおられると思います。
一方で、地方移住の失敗例もネットにあふれています。
私は農家の長男ですから、将来は両親と一緒に暮らすことを期待されていました。
一時はリタイア後に実家にも戻ることも考えましたが、今は戻る選択肢はありません。
妻の介護を考えると、戻ることは現実的ではないからです。
名古屋市で身体障害者3級以上に判定されると医療費の自己負担分を市が全額負担してくれます。1割負担でも月38,000円くらいの自己負担が生じますから、名古屋市を離れるとこれらの負担が生じます。
また妻は大学病院で関節リウマチの治療を20年以上受けています。主治医はこの病気の権威の一人ですから、継続して診療を受けることを希望しています。
更に妻は車いす生活ですから、バリアフリーの住まいが必須です。実家に戻れば木造の住宅ですから、バリアフリー化にかなりの費用をかけないと生活できません。
ただ、仮に妻がまだ健康であったとしても、実家に戻ることはしなかったと思います。(両親の介護のために私だけ一時的に実家に戻ることはあるかもしれませんが・・・)
田舎は物価が安い?
冒頭のサイト(あなぶきの介護)には田舎への移住メリットとして下記のことがあげられています。
1.豊かな自然のなか健康的に暮らせる
2.物価が安い
3.自治体の支援制度が期待できる
1は確かにそうだと思います。
ただ2の物価が安いというのは疑問です。
地価と家賃が安いのは間違いありません。その分、不動産の資産価値が低く、処分も簡単ではないことを頭に入れておかねばなりません。
その他のものについては、都会より安いかというとあまりそういう感じはしません。
私の実家の近く(といっても車の移動は必須ですが)にも大型スーパーやホームセンターがあります。大手の系列ですから値段も都会と変わりません。
衣料品なら実家から歩いて行ける距離に「しまむら」があり、安いのでいつも繁盛しています。もちろん値段は都会と変わりません。
そもそもamazon等ネット通販が拡大しており、こちらは都会も田舎も同一価格です。
3の自治体の支援制度については、どこでもやっている訳ではありません。基本は過疎対策ですから、いの一番に求められているのは若い世代です。介護等手間のかかる高齢者が求められているとは思えません。
年をとってからの田舎暮らしは大変
同サイトには田舎暮らしの注意点も書かれています。
1.車がないと生活が不便
2.病院の数が限られている
3.人付き合いが限られることも
3の人付き合いが少ないことについては、わざわざ人口の少ない地域に移住しようとするのですから、納得済みのことと思います。問題は人間関係の濃さとプライバシーがあまりないことで、性格的に合う合わないの問題と思います。
1,2は元気なうちは問題ありません。
ただ、80歳を超えるとさすがに運転はリスクが伴います。でも車がないと買い物に行けません。病気になっても、車がないと簡単には病院に行けません。
夫婦のどちらかが介護が必要ななるとまずは自宅で介護することになりますが、田舎の戸建ての家は介護に適していません。施設に入るとなると、費用が大変です。
田舎暮らしの楽しみに農作業(畑仕事)がありますが、真夏の暑い盛りの中で草取りが欠かせません。私の母のようにこの道60年という人でもさすがにきつい作業です。
個人的な意見ではありますが、元気なうちは田舎の一軒家で暮らし、年を取ったら都会のマンション暮らしという方が高齢化社会に合っているような気がします。
多少息苦しいところはありますが、バリアフリーのマンションに暮らし、スーパーや病院等が近くある都会の方が高齢者には住みやすいと感じています。