農地を処分するのは簡単でなく
亡父から相続した不動産は実家の土地建物、及び農地(田、畑、山林(みかん畑))です。
実家の土地建物の処分も頭の痛いところですが、もっと困るのが農地です。
実家の土地建物は売却価額を気にしなければ処分は可能ですが、農地はそうもいきません。タダでも引き取り手があるか分かりません。
父の死亡直後は母に相続後、相続放棄を考えたが
4年近く前に父が亡くなった時、相続放棄が頭に浮かびました。
今後足枷になりそうな不動産を手放せますが、まだ母が存命中なので、よく考えると現実的ではありません。
相続放棄とは全ての相続財産を手放すことです。そんなことをしたら、母の住まいや今後の生活資金に困ってしまいます。
そこで、不動産はいったん母に相続させてはどうかと考えていました。母が亡くなった時に相続放棄を視野に入れられます。
さっそく母に話しましたが、母は頑として頭を振りません。私に相続せよの一点張りです。本人に意思がない以上、相続させることはできません。弟妹にも不動産を相続しないかと持ち掛けましたが、丁重に拒否されました。田舎の不動産には魅力はありません。
やむなくお荷物なることは分かっていましたが、私が相続せざるをえませんでした。今振り返ると、もう少し粘り強く説得した方がよかったかもしれません。
農地の売却は困難
農地を売却するには農地法の規制をクリアしなければなりません。
農地を農地のまま売却するには農地法3条の規定により、農業委員会の許可を受けなければなりません。転用するよりは許可のハードルは低いですが、そもそも買い手を見つけるのが困難です。実家のあたりでも農業に専従している人は見当たらず、売却は困難そうです。
農地以外の用途に転用して売買しようとすると農地法5条の規定により都道府県知事の許可が必要となります。農地のまま売却するよりも買い手はつきそうですが、許可のハードルがずっと高くなります。また相続した農地は立地が良いとは言えず、住宅用地としての魅力はあまりありません。
なお相続した農地には地目が山林のみかん畑がありますが、こちらにも農地法が適用されます。山の斜面にあるみかん畑ですから、奇跡的に農地法をクリアしても買い手が見つかる可能性は限りなくゼロです。
地方自治体に寄付するという方法もあるが
地方自治体に不動産を寄付するという方法もあります。
ただし、引き受けてくれる自治体はほとんどないというのが実情のようです。
私は前の会社に勤務していた頃、会社が保有していた山を自治体に寄付したいと申し出たことがあります。残念ながら丁重に断られました。(下記記事)
相続土地国庫帰属制度に期待
今年の4月から相続した土地を国が引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)がスタートしました。
法務省:相続土地国庫帰属制度について (moj.go.jp)
相続又は相続人への遺贈により手に入れた土地について、所有者の申請により、承認された場合は、土地を国に引き渡すことができます。農地や森林も対象になります。
申請は土地の所在する法務局に行います。
制度の利用には、審査手数料及び負担金の納付が必要となります。(ちなみに田畑は特定区域にあるものを除き、面積にかかわらず20万円です)
ただし、どんな土地でも引き取ってもらえる訳ではなく、一定の要件を満たさなければなりません。
実家を引き取ってもらおうとすると、建物を取り壊さなければ申請すらできません。
樹木のある土地も承認できない土地とされており、みかん畑がこれに該当します。引き取ってもらうためには、全てのみかんの木を引き抜かなければならず、かなりの費用がかかってしまいます。
相続土地国庫帰属制度も決してハードルが低い訳ではありません。ただ、相続放棄の機を失し、売買は難しく、まして自治体への寄付が困難な状況では、相続した農地を処分する方法としては国庫帰属制度に頼ざるをえません。
細かな検討は別の日にブログに書きたいと思います。
最後に、法務省のパンフレットから相続時に土地を手放す方法として考えられる各種手続の比較を張り付けておきます。