田舎の不動産は相続しないのが一番だが・・・
先日触れたように、実質的な実入りはほとんどありませんが、何とか赤字にならずに売却できそうです。売却や維持にかかった手間まで含めれば、実質的には赤字かもしれません。
更に相続した不動産にはまだ農地が残っており、こちらの売却はかなり厳しそうです。
私が存命中に売却できるか確信はありません。農地に関する法律(農地法等)の抜本的な改正がなければ売却には高い高いハードルがあります。
私の実家に家具らず、田舎の不動産を売却しようとしても条件が悪く(実家の場合は接道が狭かったり、川に近くだったりしていること)、買い手も少ないうえ、売却額も期待できません。
農地に至っては処分は無理と思っていた方がよさそうです。
こう考えると、そこで生活していない限り田舎の不動産は相続しないのが一番と思えます。
実家を相続放棄する手がなかった訳ではないが・・・
父の相続をする時、不動産の相続放棄は頭にはありました。
もちろん母が存命で当時は実家に住んでいたので、いきなり相続放棄する訳にはいきません。
不動産については一旦母が相続し、母が亡くなったら相続人全員(きょうだい3人)が相続放棄するという方法があります。
母の預金はあと数年で底をつきます。(その後は私が援助する予定です)
母が不動産を相続した場合、他に財産はありませんから、きょうだい3人が合意すれば相続放棄は難しくありません。反対者がいれば、その人は不動産を相続すれば済むことです。
相続放棄で大変なのは、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述しなければならないことです。被相続人の財産調査の時間が必要なうえ、相続人間の話し合いも必要で、3か月では時間が足りません。
また、一切の財産を相続できませんので、相応の預貯金がある場合は判断が難しいこともあります。
父が亡くなった際、母が不動産を相続すればこうした問題はかなり解決できます。父が遺した預金の大半は私が相続したので(私が母の金銭支援をすることが前提ですが)、実質的には不動産しか財産は残りません。
父が亡くなった当時、私は母に不動産を相続するよう勧めましたが、首を縦に振りませんでした。不動産は代々長男が引き継いでいくものという考えがこびりついているためです。田舎では私より10歳上くらいの世代(いわいる戦前戦中世代)は、こうした考えの人がたくさんいます。
相続放棄した方がよかったか?
今日では相続放棄は珍しいことではありません。
2022年の相続放棄の申述の受理数は26万件もあります。
「相続放棄の申述の受理」件数は26万497件で過去最高-相続放棄を解説します | 東京都中央区日本橋の相続問題は弁護士の濵門俊也
この他、知識不足(手続きを知らない)や手間や費用などの問題で裁判所への申述はないものの、実質的には誰も相続しないというケースもかなりあると思われます。
では父が亡くなった際、母を説得して不動産を相続させ、母が亡くなった時に相続放棄をするという方法がベストだったかというと、それには疑問を感じます。
まず、相続放棄をしようとすると多くの制約が出てきます。
相続放棄の前後にしてはいけないこと 遺品整理はダメ?葬式代は? 注意点を解説 | 相続会議
上記サイトに相続放棄の前後にしてはいけないことが書かれています。
母が亡くなった場合に関係ありそうななものを抜き出すと
被相続人の預貯金の引き出し、解約、名義変更
家具や家電などの遺品整理(ただし価値次第)
被相続人の資産からの債務(借金や税金)の支払い
入院費の支払い
といったものがあります。
まず遺品整理が大変そうです。価値のあるものには手を付けられません。形見分けも制限されます。
老人ホームの費用なども未払い分が必ずでてきますが、母の口座からは引き落としできず私が払うしかありません。
注意すれば何とかなりそうですが、落とし穴が結構あり、相続放棄したつもりが否認されてしまうおそれがつきまといます。
もう一つは相続放棄した不動産の行方です
土地の相続人がいない場合の手続きや費用とは?放置するリスクも解説 - 株式会社近畿住宅流通
上記サイトにあるように、相続放棄された土地は最終的に国庫に帰属することになります。
ただし相続を放棄した場合でも新しい相続人が相続財産の管理を始められるまで、本来の相続人が相続財産の管理をすることが民法で定められています。手入れを怠ってトラブルが発生した場合には、損害賠償が発生するおそれがあり、その間はメンテナンスを続けなければなりません。
また国庫への帰属は相続財産管理人からの申し立てを経て行われますが、この手続きが大変です。
相続放棄して誰も引き取り手がいなくなった財産はどうなるの? | フェリーチェ法律事務所相続サイト
相続放棄した人が手続きにどう関わるかは不明ですが、いろいろな人に迷惑をかける事になりかねません。
放置されて荒れ果てた実家の姿を見るのもつらい事です。
両親が住んでいた家ですので、相続放棄して責任を逃れるのではなく、子供が始末をつけるのが社会的には正しいと思われます。
そう考えると、私が不動産を相続したのは間違ってはいないようです。
とりあえず実家が処分できて、やれやれというところでしょうか。