僕は失敗したことがありません
妻が頸椎の手術に尻込みするのは脊柱を手術した時のトラウマが残っているからです。
手術するか、しないか? - リタイアおじさんのシニアライフ (hatenablog.com)
手術は無事成功しましたが、長時間にわたる手術で、回復に手間取った記憶が強く残っているからです。
2011年妻は脊柱後側弯症の手術を行うために大学病院に入院しました。
成人脊柱変形 (脊柱後弯症、後側弯症など) | 東京医科歯科大学 整形外科成人脊柱変形 (脊柱後弯症、後側弯症など) | 東京医科歯科大学 整形外科 (tmdu-orth.jp)
関節リウマチが遠因となって発生したものです。
妻にとっては1999年の左人工関節置換、2008年の右人工関節置換に次ぐ三度目の手術です。
ただこれまでの手術とは違い、結構大変な手術のようです。
手術前には担当医による手術のリスクについての説明があり、手術をすることについて同意書の提出が求められます。
説明は結構時間がかかり、万一の場合には命にかかわることもあるという話もでてきました。
これを聞くと、さすがに手術をすることに尻込みしてしまいます。
担当の医師はまだ若い先生でしたが、びくびくしている妻と私に向かってしっかりした口調でこう言いました。
「確かにこの手術にはリスクがあります。失敗例も聞いています。でも僕は手術を失敗したことはありません。」
この一言は凄い説得力がありました。担当医が自信満々で言うのですから。
この言葉を聞いてすぐに同意書にサインしました。
「私、失敗しないので」はテレビドラマ「ドクターX」での大門美知子の決め台詞です。
ドクターXが最初に放送されたのは2012年ですから、私たち夫婦はそれより1年も前に同じようなセリフを聞いたのです。
手術は長時間に
手術の日、午前8時半ころ妻は手術室に向かいました。
手術の日は家族が立ち会うのが原則です。
私は4人部屋の病室で妻の手術が終わるのを待つことになります。
手術が終わるのは午後3時くらいになるかなと思っていました。
それでも人工関節の手術に比べれば、長い時間の手術です。
昼食を病院内の食堂で食べた以外は、病室内で本を読みながら待っていました。
すると、同じ病室に寝ていたおばあちゃんが話しかけてきました。
「待つのも大変だよね。私もおじいちゃん(旦那さんのこと)が手術した時、ずっと待っていたよ。でも結局帰ってこなかったよ。」
おばあちゃん、悪気はないのだろうけど、余計な事言わないでよ!
事前に先生から失敗例を聞かされていたので、時間が経つにつれて不安になります。
午後6時、日が暮れても手術は終わりません。
当然ながら手術の途中経過を聞くことはできません。
手術から12時間が経過した午後9時になっても手術は終わらず、不安が頂点に達したあたりで担当の先生が病室に入ってきました。
興奮した声で
「手術は成功しました。奥さんは大丈夫です。」
私は病室で待っていただけですが、先生は半日以上手術室でオペを続けてくれたのです。極限までの気力、体力を使って手術を成功に導いてくれました。
ありがとうございます。
その後妻が病室に戻ってきましたが、麻酔のため昏睡状態のままでした。
病院を出た時は午後10時を回っていました。
手術が終わって
妻はその後1か月くらい大学病院に入院し、自宅に戻ってきました。
手術をしたからといって、手足が今までより動けるようになることはありません。
むしろ、より歩けなくなりました。
ただ、手術してから10年間、曲りなりにも自立歩行ができたのは、手術のおかげだと思っています。
手術していなければ、もっと早く今の状態が到来していたと思われます。
私も66歳いっぱいまで仕事を続けることができました。
今回の頸椎の手術についても、手術して状況が改善する可能性は低いと考えておいた方がよいかもしれません。ただ、手術をしないと状況はより悪化する。どちらを取るかということです。
脊柱の手術をしてくれた先生は既に大学病院を去っています。
新しい先生は手術の危険性については話してくれますが、「僕が手術するから心配しないで」とは言ってくれません。大半の先生は当然ながらドクターXのようなセリフは発しません。
とはいえ、先生から背中を押してくれないと、妻が手術の決断をすることはないと思います。
私としても妻の気持ちを尊重するしかありません。