一石二鳥のアルバイト
大学時代(50年近く前)、ナゴヤ球場でよくアルバイトをしていました。
名鉄名古屋駅から一駅先にナゴヤ球場前という駅があり、ここから歩いて10分くらいのところにあった球場です。ナゴヤ球場前駅は、現在は山王駅に改称されています。
野球場でのアルバイトというとビールや弁当の売り子が頭に浮かぶと思いますが、それは別の大学の学生が担当しており、私の通っていた大学の受け持ちは「場内整理」と呼ばれるものでした。
指定席の切符の確認とか、試合中に飛んでくるファールボールの処理とかが主な仕事だったと記憶しています。
一日のアルバイト代は1,300円程度、拘束時間(試合開始の3時間くらい前に集合し、当然ながら試合終了迄は帰れない、しかも終了時間はわからない)からすると当時でも決して割のよいバイトではありません。
それでもよくナゴヤ球場でバイトしていたのには理由があります。
まず仕事が楽なこと。売り子のように重いものを持たないし、ノルマもないから必死で働く必要はありません。当時のナゴヤ球場は巨人戦と週末以外は観客もさほど多くないので気楽なものです。
更にファールボールの処理担当に当たるとよりお楽しみがあります。仕事の内容は内野指定席にいて、ファールボールが飛んできそうになると笛を吹いて注意を喚起し、お客さんがファールボールを拾った場合はその回収にあたるというものです。
重要なことは常に集中して試合を見ていて、打球が飛んできそうになると、迅速にお客さんにお知らせすることです。
ファールボールなんてそうそうは飛んできませんので(1日数球です)、仕事といっても実態は野球を観戦しているのが大半です。
中日ファンの私としては、良い席(座れませんが)でお金を貰って野球観戦ができるのですから、最高のバイトです。
審判もノンビリしていた
ノンビリ仕事をしていたのは私だけではありません。
当時は外野席と内野席の間に通路があり、試合が終わると選手はこの通路を使って帰ることになります。場内整理のバイトをしている者は試合終了近くになると通路近くに集合するのが決まりでした。試合が終われば外野の通路前に並んで選手が安全に帰れるようガードするのです。
集合場所の傍には当時審判が立っており、暇とみえてよく話しかけてきました。
現在では審判は4人で外野に審判はいませんが、当時は審判6人制でライト側とレフト側のファウルラインを跨ぐ位置に一人筒配置されており、ポール際に飛んできた当りがホームランかファウルかの判定等をしていました。(現在は日本シリーズ、クライマックスシリーズ、オールスター戦でのみ6人制が採用されているようです。)
球審や1塁塁審などと違って外野の審判が判断を要するケースはあまりでてきません。(だから廃止されたのでしょう)
そのためバイトが近くに寄ってくるとよく無駄話をしていました。
審判の位置は毎日交代しているので、外野線審になった時は息抜きを思っていたかもしれません。
「〇〇投手は今日もコントロールが悪いなあ。また帰りが遅くなるじゃないか。あいつは嫌いだ。」
なんていう選手の悪口を時折聞きました。
テンポよく投げ、コントロールが良いピッチャーが審判はお好きなようです。
時間外手当なんてのはないでしょうから、審判だって早く宿に戻って一杯やりたいのかもしれません。試合が続く限りはトラブルが発生するかもしれませんし、クレームを受けるおそれもあります。一刻も早く終わるのが一番です。(負けているチームが聞いたら怒るでしょうけど、外野審判の話なので選手には聞こえません。)
そういえば夢中で話していた時、ホームランボールが飛んできてあわてて走り出した審判がいたなあ‼(結構有名な審判です)
本当に正確な判定ができるのか怪しげですが、まあそこはプロだから大丈夫なんでしょう。
昭和40年代のノンビリした時代の昔話です。
4人制の今は審判は本当に大変だと思います。