収入が減ったほど支出は減らない
総務省統計局が公表している家計調査年報(2020年)から、リタイア世帯の消費支出をリタイア前の世代(50代)と比べてみました。
家計調査はGDPを推計する際の基礎となる重要な統計です。
比較するのは夫婦高齢者世帯(65歳以上の夫婦1組のみの世帯)と勤労者世帯のうち世帯主の年齢が50歳~59歳の世帯です。
まず収入を比較したのが下のグラフです。
50代の経常収入(特別収入は除かれています)は586,769円なのに対し、高齢者世帯では238,371円まで減少しています。
当然、収入が多ければ税金等も多くなるので、非消費支出(税金、社会保険料)を除いた可処分所得をみると、50代は460,334円、高齢者世帯は207,211円と差は縮まりますが、半分以下であることは変わりません。
次に消費支出(当然ながら非消費支出は含みません)の額を比べたのが下のグラフです。
50代の消費支出が290,605円なのに対し、高齢者世帯の消費支出は224,390円と収入ほどの差はありません。
50代の収入は高齢者世帯の2.5倍もあるに対し、消費支出のそれはは1.3倍にとどまっています。
最低限必要なものは減らせない
消費の中身の違いをみたのが下のグラフです。
教育費や交通・通信費などは大きく減っていますが、保健医療費は増加、食料費や高熱水道費はあまり変わりません。
費用を細分化し、著減のあるものを抜き出したのが下のグラフです。高齢者世帯の支出額から50代の支出額を引いてあります。
これをみると教育関係の費用が大幅に減っているのがわかります。教育費と仕送り金を合わせて27,098円減少しています。高齢化世帯では子供が独立していると思われ、負担が無くなったのが効いています。
次に自動車関係費、交通費、外食費があわせて16,767円減っていますが、これは年を取るにつれて車を運転しなくなることや、外出の機会が減っていることが影響していると思われます。
上記をあわせると43,865円の減少となり、トータルの減少額66,215円の大部分を占めています。
これらの費用は減らしたというより、年齢とともに必然的に減った費用と考えられます。
これに対し、外食以外の食費や水道光熱費は生きていくためには絶対に必要な費用であり、収入が減ったからといって簡単い減らせるものではありません。
保健医療費のように、年を取ればより支出が増えるものもあります。
高齢者世帯の消費支出額224,390円は可処分所得207,211円より若干多い程度の金額です。
多くの世帯がなるべく貯蓄を取り崩すことなく、なんとか可処分所得の範囲内でやり繰りしようとしている姿が浮かびます。
支出の中でも教養娯楽費やその他支出は楽しみを減らせば、支出も抑えられます。
共に50代の頃と比べ2割程度減っていますが、収入の範囲内で皆さん残りの人生を楽しんでいるということになるのでしょうか。