預金口座に異動がないと休眠預金になる
私が銀行員になった時(46年前)から、動きのない預金は雑益編入といって銀行の利益に計上し、オンラインからは抹消されていました。
もちろん通帳を持った方が来店されれば、雑益編入の帳簿を確認し、今度は雑損扱いとして預金を払い戻します。
当時から預金をコンピュータ管理するうえで、動かない口座を維持していくことは、システム面とコスト面で大きな負担だったのです。
入行した頃は見たこともない通帳を持参される方もいらっしゃいました。
戦後まもなくのオフラインというより手書きの通帳を持参される方もおり、目を丸くしたものです。
2019年からは、休眠預金活用法により、2009年1月以降10年以上異動のない預金は休眠預金となり、預金保険機構へ移管され、民間公益活動に活用されます。
休眠口座となった後も、多少手続きは面倒になりますが、取引金融機関において引き出しが可能です。ATM等での引き出しはできません。
定期預金に注意
では、休眠預金の対象になるのを避けるための預金の異動とだどういう行為を指すのでしょうか?
金融庁のQ&A(Q6)には、異動事由として
- 入出金(金融機関による利子の支払いを除く)
- 手形または小切手の提示による第三者からの支払請求
- 公告された預金等に対する情報提供のもとめ
をあげていますが、下二つは一般の預金者が通常関わることではないので、入出金(お金を預けるは引き出す)しかなさそうです。
https://www.fsa.go.jp/policy/kyuminyokin/kyuminyokinQA.pdf
ただ、預金者による通帳の記帳や残高照会等の行為は各金融機関が認可を受ければ対応可としており、銀行によって取り扱いが異なることになります。
普通預金の場合は引き出し等でなんらかの異動があるのが普通ですが、学校や塾、スポーツクラブ等の費用引落のため、特定銀行に口座を開設させられる場合があります。その場合は学校を卒業したり、塾をやめたりしたら口座を使わなくなります。
また使うかなと思って口座を残しておくこともあろうかと思いますが、解約しておいた方が無難そうです。
問題は定期預金です。結構まとまった金額を預けることが多いうえ、通常異動は起こりません。
定期預金は自動継続といって、期日にまた同額(ないしは利息を加えた額)の定期預金に書き換えることが多く行われます。期間1年の定期預金であれば、毎年自動的に書き換えが行われます。
この書き換え行為は異動には該当しません。
さきほどの金融庁のQ&AのQ8にその旨がでてきます。
「定期預金や金銭信託など、一定の預入期間や計算期間がある場合には、その期間の
末日(自動継続扱いのものは最初の期間の末日)から10年の間、お取引などの異動がない場合、休眠預金等となります。」
2010年1月末に作成した自動継続の1年定期預金は、2011年1月末に満期となり、それから10年間自動継続が続くと、2021年1月末には休眠預金になってしまいます。
ただ、金融機関によっては定期預金通帳を記帳すれば、異動と認めてくれるところもあります。
下は三井住友銀行のホームページで、定期預金も記帳すれば異動の扱いとなります。
定期預金のところの③に書いてあります。
この取り扱いが認められない銀行であれば、定期的(例えば5年に一度)に解約する等の手続きをとるしかなさそうです。
なお昔は証書式の定期預金も多かったので、通帳式に切り替えておくことも必要です。
ただ、休眠預金となっても引き出しは可能なので、腹をくくってそのままにしておく手もないとはいえません。
休眠預金となっても相続は可能
預金口座が休眠預金となっても相続は可能です。
さきほどの金融庁のQ&AのQ18に
「預金者等であった方がお亡くなりになった場合には、金融機関所定のお手続きを経て、その相続人が引き出すことができます。必要となるお手続きについては、お取引のあった金融機関にお問い合わせ下さい。」
と記されています。
ただ気になったのは通帳がない場合でも休眠預金の相続が可能かどうかです。
休眠預金でなければ銀行に照会して口座残高の有無を調べてもらい、通帳がなくても相続手続きは可能です。
また、生前であれば通帳・印鑑のない休眠口座でも本人確認が可能であれば預金の払い出しができます。
本人が死去し、かつ通帳もなく、休眠預金となった預金についてまで相続が可能かどうかまでは主要銀行のホームページをみても書かれていません。
私も現役銀行員ではありませんので、実務の運用はわかりません。また、機会をみて銀行に問い合わせてみようと思います。
いずれにしてもある程度の年齢になったら、使っていない銀行口座は解約し、通帳を紛失した口座は通帳の再発行手続きをし、定期預金は適宜動かし、口座のリストを作っておくなど対策をしておくことが重要です。