地方は本当に物価が安いのか
コロナ禍以降、地方移住が注目されるようになりました。
地方移住を紹介したテレビ番組を見ていると、よく出てくるのが「物価が安い」というフレーズ。道の駅やスーパーでの野菜や魚の値段を示し、「こんなに安く買えます」と連呼しています。
私の実家も一応浜松市内にありますが、平成の大合併前は郡部で結構な田舎です。日本テレビ系のZIPでも移住候補地として紹介されていました。
実家に帰った時は近く(といっても車でしか行けません)のスーパーで買い物をしていましたが、特に物価が安いという気はしません。野菜も魚もごく普通の値段で売られています。
土地の値段や家賃は確かに安いですが、それ以外はあまり変わらないという気がしていますが、統計で確認してみることにしました。
県別の物価は最大でも1.09倍
総務省が公表している統計データに消費者物価地域差指数というものがあります。
消費者物価地域差指数-小売物価統計調査(構造編)2021年(令和3年)結果- (stat.go.jp)
消費者物価地域差指数とは、各地域の物価水準を全国の物価水準を100とした指数値で示したものであり、全国平均を基準(=100)とした指数を、地域別(地方10区分、都道府県、都道府県庁所在市及び政令指定都市)に作成したものです。
指数は全てを含んだ総合指数の他に、家賃を除いた指数も公表されています。
細かなデータは上記サイトを確認いただくとして、エキスを簡単なグラフにすると
総合物価指数が最も高い都道府県は東京都で104.5です。一方最も低いのは宮崎県の97.1です。東京都は宮崎県より1.09倍物価が高いことになりますが、この程度の差であれば目くじらを立てる必要はないように思えます。
そしてこの差は家賃が大きく影響しています。家賃を除いた指数でみると、東京102.7に対し宮崎は97.1で差は1.06倍に縮まります。
また、大阪府(99.8)、兵庫県(99.8)、愛知県(98.4)などは大都市を抱えているにも関わらず、総合物価指数は100を切っています。
物価の差は確かにありますが、大都市は高く田舎は安いというのはイメージ先行のような気がします。
大都市だから食料品の価格が高いとも言い切れず
では、冒頭で話題にした食料品の価格はどうでしょうか?
食品物価の高い県、低い県等の食品物価指数を比べたのが下のグラフです。
食料品の物価が一番高いのは東京都(102.8)ではなく、福井県と沖縄県で共に103.9です。共に大都市を抱えている訳ではありません。中国・四国の各県は全て100を超えています。
一方、大阪府(99.1)、兵庫県(99.8)、愛知県(98.3)などは大都市を抱えているにも関わらず食料品の物価は100を切っています。
大都市は食料品の価格が高く、地方は安いというのも一概には言い切れないようです。
地方の特産品であれば安く手に入る可能性が高いと思いますが、それで毎日の食卓が賄える訳ではありません。野菜や果物、魚などの多くは別の産地から送られてくるため輸送コストがかさみます。安いものがあれば高いものもあるというのが現実ではないでしょうか。
名古屋は意外に物価が安い
消費者物価地域差指数は県だけでなく、大都市(政令指定都市)の指数も掲載されています。
人口100万人以上の大都市の総合物価指数をグラフにしてみました。
東京と神奈川の二つの都市を除けばあまり差はありません。
その中で私の住んでいる名古屋市は98.9と下から3番目です。
物価が比較的安い都市のようでホッとしています。