仮払金は本決算では残さない
仮払金という資産勘定があります。
仮払金とは、勘定科目(取引の内容)や金額が未確定な金銭を仮払いした場合に、それらが確定するまで一時的に使用する仮勘定をいいます。
仮払金 - [経済]簿記勘定科目一覧表(用語集) (k-solution.info)
営業マンに出張旅費や接待費を概算で前渡しする場合等がこれに当たります。
一時的な勘定ですから、本決算では正しい勘定に振り替えて、仮払金は無くしておくのが原則です。
私がいた会社でも営業マンに出張旅費を事前に渡していましたが、決算日には精算を終え、余った分は会社に返還、不足が出た場合は営業マンに支払っていました。
顧問税理士に確認するとこうしたケースでは仮払金として残してもよいという話でしたが、私が社内ルールとして決算日には必ず精算するよう指導していました。たとえ社長に払った仮払金でも扱いは同様です。
そうまでこだわるのは理由があります。
仮払金の管理がルーズだと・・・
私が銀行から前の会社に移った時、経理は銀行の先輩が管轄していて、私は企画やシステム、監査が主な仕事でした。
しばらくして会社の決算書を見ていると、仮払金が数百万円もあります。
先輩に内容を尋ねましたが把握していないとのことで、経理担当者に質すと分からないというとんでもない返事が返ってきました。
やむなく私が中心となって内容を調べることにしました。当時は経理業務はシステム化されておらず、毎日の仕訳を丹念に調べていくしかありません。
前期分から調べましたが、半分も解明されません。結構昔からの滞留分が残っているようです。
結局全容を解明するまでに1か月近くかかりました。
顧客が払うべきものを立て替えたものが結構ありましたが、発生から数年経過しているので今更顧客には請求できず、損失として処理ぜざるをえなくなりました。
仮払金のようなイレギュラーな勘定を放置するとお金(損失発生)と時間(調べるのが大変)の損が発生します。
本決算で整理しておく習慣をつけておくのが大事なことだと思います。
仮払金が少なからずある企業は怪しまれる
銀行でも仮払金が発生することがありますが、それは預金を引き出しに来た顧客に誤って多くのお金を渡してしまった時などに発生します。とりあえず仮払金として処理され、原因が究明できなければ決算日迄に損金として処理されます。銀行員にとって自己の評価にも響くため、避けて通りたい勘定です。
これが背景にあるかどうかは分かりませんが、銀行員の眼からみても仮払金は怪しげな勘定という印象です。
実際、私が銀行員時代も仮払金が多くある企業をたくさん見てきましたが、正しく損金に振り替えられていないケースが多々ありました。
また仮払税金や仮払消費税のまま決算書に残っているケースもありました。本来は納税額を計算して仮払税金や仮払消費税を消しておかねばいけないのですが、残ったままです。
決算の仕方がルーズという面も強いのですが、過去に払った税金分がずっと残っているケースもあります。
決算書に仮払金があるだけで目をつけられ、あらぬ疑いの眼を向けられるのは好ましいことではありません。
仮払金はあくまでも一時的なものであり、速やかに処理するとともに、期末にやむなく残ったとしても、勘定明細に理由を明記しておくことが重要です。