宝くじが当たった!
私の話ではありません。
銀行時代のお客さんの話です。
しかも40年近く前の話です。
20代の終わりころ、私は東京の都心店舗に勤めていました。
私の担当先に50代の経理部長さんがいらっしゃいました。
年は結構離れているのですが、同じ静岡県出身ということもあり、仲良くさせてもらっていました。
会社を辞めたら、静岡に帰り会計関係の仕事をしたいと常々言っていたのを覚えています。税理士の資格を持っている(ただし登録は補助税理士)という話でした。
ある時、銀行の応接で話をしていると、
部長「静岡に帰るのはやめて、こちらでずっと生活しようと思う」
私「突然どうしたんですか」
部長「実は宝くじが当たったんだ」
私「それはよかったですね。3等とか4等あたりですか?」
部長「馬鹿を言ってはいけない。1等が当たったんだ。」
私「冗談を言わないでください。宝くじの1等なんて当たるはずがないでしょう!」
部長「そこまで言うなら今度証拠をお見せしましょう」
実は私はくじというものを信用していませんでした。
幼いころ駄菓子屋に行くと、「むき」と称するくじを引いてお菓子が当たる商品がありました。賞品がセットされており、くじに応じて取っていきます。1等は大きな箱に入ったお菓子でで、一つしかありません。
何回引いても1等は当たりません。
ある時、ふと気づきました。1等はいつ店にいってもあります。誰か1等が当たれば無くなるはずですが、いつもあります。1等がなくなればくじを引く子供はいません。たぶんこのくじには1等はないんじゃないか!
「三丁目の夕日」という映画の中で、駄菓子屋を経営する茶川氏が黙々と外れくじを作るシーンがでてきます。あれと同じです。
子供だましとはいえ、子供心を弄ぶのはいかがとは思いますが、コンプライアンスという言葉が無かった時代なので、今の価値判断は当てはまらないのかもしれません。
ということで当たりくじというのを信用いていませんでした。
まして1等なんて・・・
本当に1等が!
しばらくして、部長さんが私に第一勧業銀行(今のみずほ銀行、当時から宝くじ業務を受託していました)を見せてくれました。
通帳には20,000,000円の入金がしっかり記帳されていました。
当時の1等賞金は2,000万円です。
本当に宝くじの1等が当たったのをこの目ではっきり確認できました。
宝くじの1等に遭遇したのもこの時限りです。
部長さんは宝くじをよく買う方ではなく、たまたま有楽町駅前で時間ができたため宝くじを買ったそうです。運のよい方ですね!
この部長さん、経理をやっているだけあって堅実な方で、この当選金でマンションを買うことにしたというのです。購入が決まったら、不足分を住宅ローンで貸してほしいとの依頼を受けました。
やがて、千葉の幕張にマンションを買うことが決まり、住宅ローンを融資しました。何気なく買った宝くじがマンションに化けたということです。
その後、私が転勤したこともあり、部長さんとは会えていません。
唯一目にした情報は、勤めていた会社が倒産したということです。宝くじが当たってから10年くらいたっていましたから、既に会社をお辞めになっていたかもしれません。
堅実な生き方をされる方ですから、穏やかな人生を送られているかなと思っています。
一方、宝くじの1等を目にした私ですが、今に至るまで宝くじはほとんど買っていません。
自分の人生の考え方に運と不運は五分五分でくるというのがあり、大切な運は仕事や家族のためにきてほしいので、くじで運を使うのはよしとしないからです。