消費税還付が発生するのは
つい先日の新聞に掲載された記事、消費税還付をめぐり国会議員が国税局に圧力をかけたというものです。
事の真偽はさておき、ここでは税務調査の発端となった消費税還付について触れたいと思います。
企業の売上が発生すると、通常は消費税が発生しますので、受け取った消費税は仮受消費税として処理されます。
一方、費用については通常消費税を払いますので、払った消費税は仮払消費税として処理します。
通常は仮受消費税の方が多いので、差額の消費税を納付することになります。
ここで注意すべきは全ての取引に消費税が課せられる訳ではないことです。
売上では輸出には消費税が課されません。
輸出が売上に占める割合の高い企業では、支払う消費税の方が多いので消費税が還付されるケースは結構あります。
一方、費用の中で不課税となるものが下記に例示されてます。
一方、非課税となる取引もあり、下記のものが例示されています。
また、消費税は対価が発生するものに課せられますから、会計上の費用である減価償却費や利益には消費税は課せられません。
費用の中で消費税が課せられない最大のものが人件費(福利厚生費を除く)です。給与・賞与(不課税)、社会保険料(非課税)がこれに該当します。
一方、企業が取得する設備の代金は費用とはなりませんが、物品の購入ですから当然消費税が発生します。
上記を踏まえ、ラフに企業が納める消費税を計算すると
(売上高-輸出-(費用-人件費-減価償却費+設備投資))×消費税率(10%)
となります。
売上高-費用=税前利益とすると、上記の式は
(税前利益-輸出+人件費+減価償却費-設備投資)×消費税率
となります。
設備投資を減価償却の額を目安に行い、輸出のない企業では
(税前利益+人件費)×消費税率が納める消費税の目安となります。
赤字企業でも赤字幅が人件費を超えなければ、消費税を納付することになります。
したがって消費税還付が起こる場合は、輸出を主とする企業を除くと
- 人件費を上回る大幅な赤字が発生した
- 多額の設備投資を実施した
というケースになります。
現実には多額の設備投資を行った時に、運悪く決算が赤字になった場合に消費税還付が起こることがあります。
消費税の納付方法にも注意
もう一つ注意しておきたいのは消費税の納付方法です。
消費税の支払回数と中間申告での納付額は前期の消費税額をベースに決まります。
詳しくは下記ブログをご覧ください。
消費税の支払い回数は、前期の消費税額によって年1回、年2回、年4回、年12回の4パターンがあります。
もし、今期に入って売上が急減して赤字になったり、多額の設備投資をした場合、期を通しては払う消費税が多いとしても、払う消費税自体は急減するのに対し、前期実績に応じて消費税を先に分割納付していることから、決算時に消費税還付が発生することがあります。
年12回払い(毎月払い)だと、こうしたことが起こりやすくなります。
還付請求すると税務調査が来やすい?
消費税の還付を受けると税務調査が入りやすくなるという噂があります。
冒頭のニュース記事でも、消費税の還付請求が発端になっています。
上記会計事務所のサイトで記載されているように
・不正に消費税の還付を受ける人が多い
・還付を受けること自体がイレギュラー
であることが、査察に入りやすい状況を生み出しているようです。
毎年国税庁が発表している「査察の概要」によると、消費税は重点事案として常にトップに記載されています。
消費税還付は企業が消費税を納めるのではなく、返してもらう(国が金を払う)案件ですから税務当局が神経を尖らしているのは当然です。
私も前の会社にいた当時、2回消費税還付を受けた経験があり、どの企業でも発生しうることと思います。
ただ、こちらの資料(大阪国税局の消費税の高額還付申告者等に対する調査状況)からみると、非違件数の割合は、実地調査(特別・一般)に比べ低いとされています。
消費税還付に至った原因を究明し、その旨を消費税申告書に記載しておけば問題はないと思われます。
ただ、税務調査は消費税だけを見る訳ではないですから、来て喜ぶ人はいませんが・・・