相続税対策が必要な人はどれほどいるの?
インターネットで相続対策を検索すると、相続税対策の話が主体となります。
こちらは税理士法人のサイト。
ことらは銀行のサイト
どうしても相続を商売のタネしようとしていますから、相続税の節税が中心になります。
ただ、実際に相続税を払う人がどれくらいいるかというと、相続が発生する人の1割もありません。
上記国税庁のサイトによると、令和2年に相続税を申告した数は死亡者数の8.8%となっています。
平成27年の税制改正により、相続税の基礎控除額は3,000万円+(法定相続人の数×600万円)に引き下げられ、課税割合もアップしました。
自宅に加え、そこそこの金融資産があれば、相続税がかかりそうな人も多いような気がしますが、課税割合は8%台で推移しています。
3年前父が亡くなった時は17,638㎡(評価額33百万円)の土地と実家の建物および7百万円の預貯金で相続財産の評価額は計40百万円でした。法定相続人が4人いるので54百万円迄相続税は非課税ですから、相続税はかかりませんでした。
ちなみに相続税が課せられる被相続人一人当たりの課税財産額は1億3,619万円とかなり高額です。
これに対し、相続税が課せられる被相続人1人当たりの相続税額は1,737万円と課税価格の13%弱に過ぎません。相続が発生する人の91%は相続税を納める必要がなく、残る9%の人も13%程度の税金で済むならばそれほど負担が大きいとは言えません。
ちなみに相続財産が1億円で相続人が3名(子供3名)であるとした場合、相続税の総額は630万円です。相続人の中に配偶者がいれば、配偶者の相続税は法定相続分迄は無税となるため、実際に収める相続税はもっと少なくなります。
計算例はこちらを参照ください。
相続財産が1億円で相続税が630万円(配偶者が相続人に入るともっと減る)なら、それほど負担ではありません。
相続財産が換価困難なら別ですが、ある程度預金があるのであれば、支払いはそれほど困難とは思えません。
ぁずは相続財産の内訳ですが、1/3は現預金で占められており、ここから相続税が払われていると思われます。
こちらのサイトに相続税のシミュレーションが出ています。
相続税計算シミュレーション|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】 (chester-tax.com)
相続人が子供3名とした場合、相続財産3億円で2割程度の相続税が発生します。
さすがにこの金額になると相続税対策が必要と思われます。ただ、これほどの財産を持っている方が日本にそうたくさんいるとは思えませんが・・・
暦年贈与は万能ではない
節税対策としてよくでてくるものに暦年贈与(冒頭の税理士のサイトに出ています)があります。
暦年贈与とは年間110万円の基礎控除の範囲で贈与する分には税金がかからないことを利用して、相続人にこの範囲内で継続して贈与を行おうというものです。(契約書が必要なようです。)
相続人が3人いるとした場合、毎年3人に100万円づつ暦年贈与をすれば、10年間で300万円×10年=3,000万円を無税で贈与でき、その分を相続財産から減らすことができます。
ただ溢れるほど財産があればともかく、被相続人も生きている間は生活していかねばなりません。年を取れば、介護のために多額の費用が必要になり、資金が足りなくなるおそれもあります。その時慌てふためいても、どうにもなりません。
さらに、税務当局も節税の動きについては目を光らせています。
税務調査で更生を余儀なくされる可能性もあります。
恐ろしい…9割強が税務署から処分「贈与税の税務調査」の実態(幻冬舎ゴールドオンライン) - Yahoo!ニュース
また、暦年贈与自体が不公平な制度であるとして、廃止に向けた動きもあります。
「暦年贈与」が終了するってホント? 改正法についておさらい!(ファイナンシャルフィールド) - Yahoo!ニュース
暦年贈与をするにあたってはこの辺も踏まえて対応した方がよさそうです。
アパート経営もリスクあり
昔からの節税策としてアパート経営があります。
未利用の土地があれば、そこにアパートを建築することにより土地と建物の評価額を下げることができます。
ただ、日本の人口はしばらく減少基調が続きます。
つれて住宅の必要数の減ってきますから、今後のアパート経営にはリスクが付きまといます。
相続時に現金化しようとしても、簡単には売却できません。
あえて節税を狙うより、相続税を払った方がリスクは小さいような気がしています。
相続対策としては、相続税よりも重要なことがたくさんあります。
また別の日に書いていきたいと思います。