相続土地国庫帰属制度は利用できるか
相続土地国庫帰属制度が今年の5月からスタートしました。
法務省:相続土地国庫帰属制度について (moj.go.jp)
相続した土地を国が引き取ってくれる制度です。
相続又は遺贈よって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることができます。
不要な土地は売却すれば多少なりともお金が入ってきますので、タダで土地を引き取ってもらう必要はありません。
ただ、売却が困難な土地が結構あります。今日では相続した土地が処分利用困難で放置されるケースが増えてきています。相続土地国庫帰属制度は相続した土地が放置され、将来的に所有者不明の土地になるのを防ぐために創設された制度です。
タダで引き取ってもらうというより、実態はお金を払って土地を引き取ってもらう制度です。
審査手数料に土地1筆当たり14,000円、更に負担金(田畑は面積にかかわらず20万円、森林は面積に応じて算定)がかかります。
法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金 (moj.go.jp)
私が亡父から相続した土地のうち、実家については市街化区域にある宅地ですから値段にこだわらなければ売却は可能です。
ところが田、畑やみかん畑(地目は山林)については市街化調整区域にあり、農地法の適用を受けるものもあることから売買は極めて困難です。
何とか私が生きている間に処分したいので、帰属制度が利用できないか調べてみました。
みかん畑は困難だが田畑は利用可能かも
この制度を申請可能なのは相続又は遺贈よって土地の所有権を取得した人ですので、私が利用することは問題ありません。
農地や森林も申請は可能です。(下記Q&Aの6却下事由Q8、Q9)
法務省:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A (moj.go.jp)
下記サイトでは8月迄の申請のうち4割が農地とされています。
【体験談あり】相続土地国庫帰属法を使うなら農地がオススメ!? | 負動産の窓口 (souzokutochi-kokkokizoku.com)
問題は引き取ってもらえない土地があることです。
法務省:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件 (moj.go.jp)
引き取ることのできない土地には、申請ができないケースと承認を受けることができないケースがあります。
(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)
A 建物がある土地
B 担保権や使用収益権が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 土壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
私が相続した農地やみかん畑については却下自由に該当するものはないと考えています。ただし、土壌汚染や境界については調査が必要になるかもしれません。
ネックになるのは不承認事由です。
Bの処分を阻害する有体物の例として「果樹園の樹木」が挙げられていますが、私の相続したみかん畑には当然ながらみかんの木が植わっており、これに該当してしまいます。引き取ってもらうにはみかんの木を全て引き抜かねばならず、結構な費用がかかってしまいます。
木を全て引き抜いたとしても、みかん畑は山を切り開いた傾斜地にあるものが大半であり、Aの「一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地」に該当する可能性が高そうです。
こうしてみるとみかん畑の引き取りは極めてハードルが高いと考えざるをえません。
対象は田畑となりそうです。
注意すべきは農地の現況で、農地として利用できなくなると管理費の負担がかかり、却下される可能性がでてくるようです。
相続土地国庫帰属制度を利用できるのか~農地の場合~ - 農地森林専門の行政書士事務所 (nm-gyoseishoshi.jp)
早めに申請した方がよさそうです。
とりあえずは法務局に相談することを検討してみようかと思っています。
本来であれば対象土地の存在する地方法務局(私の場合は静岡地方法務局)に相談することになりますが、妻の介護で出向くことが困難なので名古屋法務局に行ってみようかと思っています。(妻のデイサービスの日なら自転車で行けます。)