長生きした場合に備え繰り下げを選択したが
私は年金を4年ほど繰下げて受給を開始しましたが、繰り下げを選択する人は1%程度しかいません。
ただ65歳を超えて働く人も増えてきており、繰り下げを選択する人も増えてくると思っています。
年金繰り下げというと「何歳まで生きたら得か」という損益分岐年齢(5年繰り下げなら81歳くらいが分岐点)がでてきますが、いつまで生きられるかなど誰も分かりません。判断のポイントはそこではないと個人的には思っています。
私が繰り下げを選択したのは長生きのリスク対応です。想定外に長生きするとその分余計にお金がかかります。介護施設の世話になる可能性も高まります。年金額を増やして、何とかやりくりしようという訳です。
住民税が課税となる金額に注意
65歳時点での年金額が住民税非課税となる金額を下回っているのであれば、繰り下げには注意が必要です。
住民税非課税世帯のメリットは先般のブログに記載しました。
介護保険料が安くなる(高齢者世帯では税金より介護保険料の方が負担大です)のはもちろんですが、医療費や介護関係の費用の自己負担額が少なくてすむことも大きなメリットです。
年を取れば取るほど病気になったり、介護が必要になってきます。自己負担は少ないにこしたことはありません。
収入が年金だけであれば、単身世帯は155万円、夫婦二人出世帯では各自211万円以下であれば住民税非課税世帯となります。(名古屋市の場合、市町村によって基準は異なります)
年金を繰下げても、この金額を上回らないようにする方が賢明かと思います。
年金を貰いすぎるのも
私の場合は65歳時点で受給を開始しても住民税非課税世帯には該当しないので、繰り下げを選択しました。
繰り下げ期間を長くすればするほど毎年の年金額は増えていきます。現在では75歳迄繰り下げが可能です。
ただ年金が増えてくると不利になることがでてきます。
高額医療費や高額介護サービス費、高額医療介護合算制度では住民税非課税世帯でないと支払う上限額が上がりますが、極端に増える訳ではありません。ところが所得が一定額を超えると、一気に限度が上がり負担が増えてしまいます。
例えば医療費自己負担(個人毎、外来だけの場合)の上限は住民税非課税世帯ですと8,000円ですが、これを超えると18,000円に増加、更に課税所得が145万円以上になると80,100円+(医療費-267,000円)×1%にまで増えます。
課税所得(地方税)145万円とは夫婦二人世帯で年金収入(個人毎)が330万円あたりが目安になると思われます。
また、75歳以上から加入する後期高齢者医療制度では個人負担は通常1割ですが、課税所得が28万円以上かつ年金収入+その他の合計所得金額が単身世帯の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上の人は、窓口負担割合が2割になります。
後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について) | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)
年金が増えすぎるのにも注意が必要です。
加給年金が貰えなくなる
加給年金とは65歳時点で年金を受給できる資格を得た夫(妻)に対し、その人に生計を維持されている妻(夫)や子がいる場合に加算される年金です。妻(夫)が65歳になると加算はなくなり、妻(夫)に振替加算(金額は減少)がなされます。
加給年金額と振替加算|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
年金の繰り下げ待機中は加給年金や振替加算分を受け取ることができません。(下記の繰下げの注意点1参照)
年金の繰下げ受給|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
私の場合は妻と年齢差がほとんどなく(妻が1歳年下)、かつ妻が障害年金を受給していて加給年金を受け取ることができないため、繰り下げの支障にはなりませんでした。
年齢差があるご夫婦は貰える金額が大きいので、繰り下げを選択する場合はご注意ください。
女性の方が繰り下げのハードルが低い
厚生年金(基礎年金を含む)の平均支給月額は男性が17万円、女性が10万円となっており、男性の方が支給額が多くなっています。
5年程度の繰り下げをしても住民税が課税される女性は多くはないお思われます。加給年金の問題が生じる可能性もあまりありません。
平均寿命は男性が81歳なのに対し女性は87歳と長生きです。
こうしたことを考えると女性こそ長生きに備えるため、年金を繰り下げ受給することにより年金額を増やすことは有効な策だと思いますがいかがでしょうか?